気象病とは、天気や気圧、湿度の変化から体に悪影響を受けるものの総称です。これに加え、日照時間・降水量・雷・風などの変化からも影響を受けます。
天気の変化によって痛みが生じる「天気痛」はその代表的な例であり、気象病の予防や対処法において重要な役割を果たすのが自律神経です。
気象病の症状が出る気候やタイミング、症状の種類は人それぞれで、わずかな気圧の変動でも体調に影響を受ける人もいます。
そのため、多くの人が気象病の予防対策や対処法を知り、症状を少しでも和らげたいと考えているのではないでしょうか。
この記事では、その解決策をご紹介しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
気象病とはどんな症状?
天気が悪いと心も体も絶不調…
このように、天気に関することで体調不良に悩まされるのが気象病です。
具体的には、以下のような症状が現れます。
・頭痛 ・腰痛 ・関節痛神経痛
・耳鳴り ・めまいふらつき
・憂鬱 ・倦怠感(だるさ)
・首こり肩こり ・眠気 ・むくみ
・吐き気おう吐 ・便秘
・イライラ ・うつ病
・胃腸の調子が悪くなる
2024年6月に統計分析会社が実施した2024年気象病調査によると、気象病による不調の1位は頭痛で、最も多い症状でした。頭痛は、血液に水分がたまって血管が拡張し、神経を圧迫することで引き起こされます。
頭痛の中でも片頭痛は、脳の血管が急激に拡張することで起こり「ズキンズキン」と脈打つように痛むのが特徴です。
一方、緊張型頭痛が現れる人もおり、これは精神的ストレスや肩や首の筋肉の緊張によって発生し、頭全体が締めつけられるように痛む特徴があります。
この場合の頭痛は、血管の拡張によるものではなく、後頭部や首の後ろ側の筋肉が収縮することが原因です。
同じ頭痛でも気圧の変化によって、血管に影響を受ける人もいれば、筋肉に影響を受ける人もいます。
また、天気痛以外にも自律神経の調節がうまくいかずに、めまい・ふらつき・むくみ・倦怠感などが現れる人もおり、症状は人によってさまざまです。
統計分析会社の調査結果によると、気候や天気の変化による不調で日常生活や仕事に影響がある人は、約70%にのぼることが明らかになりました。
その影響の度合いは「支障をきたす」「少し影響する」「かなり影響する」などさまざまですが、70%の人に影響があることから、気象病に悩まされている人が多いことがうかがえます。
参照:統計分析研究所株式会社アイスタット|2024年気象病(天気痛)に関するアンケート調査
気象病が起こる原因
気象病の予防対策や対処法を紹介する前に、まずは気象病が起こる原因を理解しましょう。
気象病は、気候の変化に伴う温度や湿度、気圧の変化が内耳に影響を与え、不調を引き起こすことが原因です。
気温が上昇すると片頭痛の症状が悪化しやすく、逆に気温が低下すると肩こりや緊張型頭痛、関節痛などの症状が悪化しやすいとされています。
また、皮膚や粘膜には、温度や湿度を感じるセンサーがあり、脳や脊髄の中枢神経と内臓にも存在します。
これらのセンサーは、外部の温度や湿度の変化を感じ取り、その刺激が自律神経のバランスを乱し、不調や不調の悪化につながると考えられているのです。
自律神経とは、以下の2つに分かれた神経のことです。
- 交感神経 :体を活動的にするためのアクセルの役割
- 副交感神経:体をリラックスさせ、活動にブレーキをかける役割
低気圧による不調の原因は、内耳にあります。内耳は耳で受けた情報を、脳や神経に伝える役割を担う器官です。
気圧の変化を内耳のセンサーが感知し、平衡感覚をつかさどる前庭神経が過剰に興奮することで、自律神経のバランスが乱れます。
これにより、交換神経が優位になると、めまいや片頭痛、関節痛が悪化します。一方、副交感神経が優位になると、眠気やだるさ、うつ症状が生じやすくなるのです。
気象病を予防するための対策
気象病は気候の変化によって引き起こされますが、症状が出る前に防ぐ方法があります。
以下で、その気象病を予防するための対策をご紹介しましょう。
自律神経を整える
夜更かしや朝寝坊、不規則な食事時間、ストレスが多いと自律神経のバランスが乱れ、気象病を引き起こしやすくなります。
自律神経である交感神経と副交感神経は、1日のリズムに合わせて働きますが、そのリズムが乱れると、だるさ・頭痛・不眠などの症状が現れて自律神経の乱れにつながります。
気象病を予防するには、自律神経を整えることが重要です。そのために、以下のような規則正しい生活を心がけましょう。
- 早寝早起き
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- 規則正しい食事
規則正しい生活とは、睡眠や運動、食事などの習慣を規則的に行うことをいいます。
毎朝決まった時間に起きて朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ、生活リズムが安定します。また、朝食をしっかり摂って、1日をスタートさせましょう。
起床時間と同様に、就寝時間も規則正しくして十分な睡眠をとり、早寝早起きを心がけることが大切です。
就寝前の90分〜2時間前にお風呂に入ることで、体がリラックスし、自律神経も整います。
休日だからといって寝だめをすることは避けましょう。寝だめは時差ぼけのような状態を引き起こし、体内時計のリズムが崩れる原因となります。
適度な運動は、激しい運動でなくても、軽めのストレッチやウォーキングで十分です。
忙しくて運動の時間がとれない場合は、移動の際に階段を使ったり歩いたりして、適度な運動を習慣にすると良いでしょう。
腸内環境を整える
気象病を防ぐためには、自律神経を整えることを心がけ、規則正しい生活を送ることに加え、腸内環境も整えましょう。
腸と脳は自律神経を介して情報を交換しており、脳が緊張やストレスを感じると、その影響が腸に伝わります。
その結果、便秘や胃腸の不調といった気象病の症状が引き起こされるのです。
自律神経を整えるためには、ビフィズス菌や乳酸菌を含む発酵食品を摂取して、腸内のビフィズス菌を増やす必要があります。
主な発酵食品は、以下のとおりです。
- 納豆
- ぬか漬け
- ヨーグルト
- 乳酸菌飲料
また、腸もみも腸内環境を整えるのにおすすめです。
便秘外来で有名な小林弘幸教授がおすすめする、腸もみがあります。
それは、便が溜まりやすい腸の四隅をつかんでほぐす方法です。左右の肋骨の下と左右の腰骨付近の四隅は腸の曲がり角になっているため、便が滞りやすい場所となります。
この曲がり角をイメージしながらマッサージを行ってください。基本的に朝と夜の2回行います。ただし、食後1時間は避けましょう。
以下、3分でできる基本の腸もみをご紹介します。
左手で左の肋骨下を、右手で右の腰骨付近をギュッとつかみ、ゆっくりと揉みほぐします。両手の位置を入れ替えながら、合計3分間行います。
ぜひ腸内環境を整えて、予防効果を高めましょう。
予報アプリを利用する
気象病の予防対策として、予報アプリはとても役立ちます。
よく利用されているおすすめアプリは、以下のふたつです。
- 天気痛予報:ウェザーニューズが医師と共同開発した気象病対策アプリ
- 頭痛ーる :気象予報士が開発した気象病対策アプリ
予報アプリは、気圧や気温などの気象状況の変化によって、体調不良が起こりそうな時間帯を予測し、確認できます。また、症状の記録もでき、体調管理に役立つのが特徴です。
翌日に注意が必要な予報がある場合、前日にスマートフォンにお知らせが届くため、気象病の症状発症の目安になります。
さらに、どのような気象条件で体調不良が起こるかを毎日記録することができ、自分の体調管理に便利です。
記録を続けることで、体調不良のパターンを把握しやすくなり、いつでも記録した内容を振り返ることもできます。
体調不良のパターンがわかると、薬の準備や体調に合わせたスケジュールの調整など、自分に合った対策ができるようになり、心構えができて安心です。
気圧調整用の耳栓をする
気圧の変化を内耳のセンサーが感知して不調を起こす気象病には、気圧調整の耳栓をすることで予防が可能です。
この耳栓は、耳栓内部にある気圧調整フィルターが鼓膜にかかる圧力をコントロールし、気圧変化を調整します。
一般的な耳栓とは異なり、音が聞こえるため、日常的に使用できるのが特徴です。
気圧調整用の耳栓は、100円ショップで販売されているものから5,000円を超える高級品までさまざまです。
ほとんどの商品は、1,000〜2,000円ほどで販売されていますので、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
コーヒーなどカフェインを摂取する
気象病予防の対策として、コーヒーなどのカフェインを摂取するのがおすすめです。
コーヒーに含まれるカフェインは、血管を収縮させる働きがあるため、血管が拡張して起こる頭痛を和らげる効果が期待できます。
ただし、健康な成人のカフェインの1日摂取量は、最大400mgとされているため、コーヒーならマグカップ(237ml入り)で約3杯までにとどめてください。
カフェインはあくまでサポート的な役割を果たすものであり、摂りすぎには注意が必要です。
また、アップル&ハニーブッシュというハーブティーを飲むと、頭がスッキリするという声もあるので、試してみてはいかがでしょうか。
耳のマッサージでセルフケアをする
低気圧による不調は内耳に関係するため、耳周辺の血流を良くすることが、気象病の予防に効果的です。
耳をホットタオルで温めたり、耳のマッサージでセルフケアを定期的に行ったりすると良いでしょう。
1分でできる耳のマッサージ
- 親指と人差し指で両手の耳を軽くつまんで、上・下・横にそれぞれ5秒間引っ張る。
- 耳を優しく横に引っ張りながら、後ろに向けてゆっくり5回回す。
- 耳を包むように折り曲げて、5秒間キープする。
- 手のひらで耳全体を覆い、後ろに円を描くようにゆっくりと5回回す。
参照:ウェザーニューズ
また、耳ツボを刺激するのもおすすめです。
内耳のツボを押すと血流を良くするだけでなく、リンパの巡りが良くなり、免疫力アップが期待できると言われています。ぜひ、試してみてください。
気象病が起きたときの対処法
気象病の予防対策は理解しましたが、実際に気象病が起きたときの対処法はどうすればよいのでしょうか。
以下に、具体的な対処法をご紹介します。
体を温める
気象病における天気の変化で生じる天気痛には、以下のような慢性痛が増強する疾患があります。
- 片頭痛
- 腰痛
- 線維筋痛症
- 関節リウマチ
これらの慢性疼痛は冷えると痛みが悪化し、交感神経が優位になりますが、温めると副交感神経が優位になり、痛みが和らぎやすくなります。
これは、冷えると体の血管が収縮して血流が悪くなり、温めると血管が拡張して血流が改善されるためです。
そのため、頭痛や関節痛の症状が現れた場合は、体を温めて対処しましょう。湯船につかることで体が温まり、副交感神経が優位になるため、自律神経の乱れを整えることが期待できます。
体の中を温めることも重要なので、冷たい飲食物や体を冷やす食材の摂取を控えるようにしましょう。白湯を飲んで体を温めるのもおすすめです。
部屋の空調を整える
気象病は、気温の変化で生じるため、部屋の空調を整えることで改善が期待できます。
エアコンや扇風機で空調を整えると効果的です。特にエアコンは、除湿冷房にすると痛みが軽減することがあります。
また、部屋が冷えているときは、気温に合わせた服を選び、保温することを心がけましょう。
気象病に効く薬や漢方を服用する
気象病の症状がつらいときは、気象病に効く薬や漢方を服用しましょう。市販薬には、低気圧による不調を改善する漢方が販売されています。
五苓散という漢方成分が含まれたこの漢方の目的は、気圧の変化で不調が起きる頭痛やめまいを改善することです。
漢方医学では、体を潤す役割を持つ「水」という概念があります。水は天候や気圧の変化に影響されやすく、体内の水のめぐりが滞ると、むくみが生じやすくなるのです。
そのため、頭に水が滞るとむくみが生じ、頭痛やめまいが起こります。五苓散は、体内の水のバランスを整えることで、これらの症状の改善に期待できる漢方です。
また、抗めまい薬は内耳の血液循環を改善し、神経の興奮を抑えることで、めまいやその他の症状を和らげます。めまいや耳鳴りの初期症状が出た時点で飲むと、その後の痛みを抑える効果が期待できます。
薬に頼りたくない人もいるかもしれませんが、頭痛やめまいが生活に支障をきたす場合は、ためらわずに薬を服用しましょう。
気象病の影響が少ない地域に引っ越す
極端な方法ですが、気象病の影響が少ない地域に引っ越すのもひとつの対処法です。
気圧の変化が少ない地域や、ストレスを和らげる自然が多い場所など、環境を変えることで気象病の症状を緩和できる可能性があります。
特に、台風がくる頻度が低い地域や、梅雨時の雨量が少ない地域などもあるでしょう。実際に、アトピー性皮膚炎の人が、温泉地に引っ越して症状が改善されたという話もあります。
日常生活で気象病の影響を大きく感じる場合、引っ越しをひとつの対処法として、検討してみてはいかがでしょうか。
気象病になりやすい人
気象病になりやすい人は、もともと片頭痛持ちの人や乗り物酔いをしやすい人です。
内耳が少ない刺激でもめまいを感じやすいため、その傾向があります。また、気象病は男性よりも女性に多いです。
女性の場合、月経周期や更年期などによる女性ホルモンの乱れが自律神経の働きに大きく影響し、気象病が起こりやすくなります。
さらに、デスクワークで長時間座っている人は血流が悪くなり、冷房が効いたオフィスで働いている場合、自律神経が乱れる可能性があります。
これらの人は、気象病の症状が現れやすい傾向があるため、注意が必要です。
気象病になりやすい時期
気象病になりやすい時期は、気候変化が激しい梅雨時期や台風シーズン、季節の変わり目などです。
梅雨時期は湿気が多く低気圧が続き、台風は気圧変化が大きいため、症状がでやすくなります。
また、季節の変わり目では気温の差や気圧の変動が大きいため、同様に症状がでやすくなるのです。
これらの時期以外でも、雨やくもりの日でも気圧の変化が起こるため、気象病になりやすいとされています。
気象病の受診は何科?
気象病かな?と思っても、どの診療科を受診すべきか迷うことがあります。
おすすめは「気象病外来」や「天気痛外来」といった専門の診療科です。
気象病外来でもいくつか分類があるため、以下で詳しくご紹介します。
気象病外来(脳神経外科・脳神経内科)
気象病外来の中で、頭痛を専門にしている診療科があり、脳神経外科や脳神経内科のドクターが開設していることが多いです。
そのため、近くに専門外来がない場合は、脳神経外科か脳神経内科を受診すると良いでしょう。
脳神経外科や脳神経内科には、MRIやCTといった脳を検査する機器があることが多いです。
特に頭痛の症状がある場合は、ほかの病気の可能性も考えて、検査してもらうことをおすすめします。
ただし、個人クリニックには必ずしも検査機器があるわけではないので、事前の確認が必要です。
また、予報アプリで症状の記録をしている場合は、その記録を提示して自分の状況を把握してもらいましょう。
気象病外来(耳鼻咽喉科)
頭痛がなく、めまいや耳鳴りが症状の場合は、耳鼻科咽喉科が開設している気象病外来がおすすめです。
気象病外来と聞くと頭痛専門を連想する人が多いかもしれませんが、耳鼻科咽喉科が開設している場合もあります。
主に、内耳に関連して起こるめまいや耳鳴りの症状に対して診療を行います。
気象の変化に対応する生活指導や投薬を行い、頭痛や肩こり、関節痛、だるさなどの症状改善が期待できる診療を行うところが多いのが特徴です。
また、頭痛と同様に、ほかの病気の可能性も考慮して検査を受けること、そして予報アプリで記録した症状を提示することをおすすめします。
気象病とうまく付き合っていこう
この記事では、気象病の症状や原因、予防対策、対処法などについて解説しました。
現代では、70%の人が気象病の影響を受けています。気象病は気候だけでなく、体質や生活習慣によっても引き起こされます。
自分の体調を注意深く観察し、予防対策や対処法を実践しながら、気象病とうまく付き合っていきましょう。
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